シフト制の留意事項

考えること

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令和4年1月7日厚生労働省から、「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」という文書が出されています。
介護事業所や飲食店では、ほとんどがシフト制を採用していることから注意しておく必要があろうかと思います。
ただし、この文書は、行政通達や告示、指針、ガイドラインとして発出されているわけではありません。
「望ましい」「必要である」という文言で終わっていることから、どこまで従う必要があるものか悩ましいところはあります。
今回は、それを踏まえてどこまで対応するべきか書いていきたいと思います。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html

背景としてどんなことがあるのか

 発出された留意事項の中では、次のようなことが書かれています。

・人手不足や労働者のニーズの多様化、季節的な需要の繁閑への対応として、パートタイム労働者やアルバイトを中心に、労働契約締結時には労働日や労働時間を特定せず、一定期間ごとに作成される勤務表等において初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態いわゆるシフト制)が採用されている。
・労使の事情によって柔軟に労働日・労働時間を設定できるという点でメリットがある。
・他方、使用者の都合により、労働日がほとんど設定されなかったり、労働者の希望を超える労働日数が設定されることにより、労働紛争が発生しやすいデメリットがある。

新型コロナ感染症の影響で、飲食店では休業が多くなりました。
シフト制では具体的な労働日や労働時間が示されていないため、使用者側では雇用調整助成金の算定がしにくかった、労働者側では労働日がほとんど設定されないなど、問題点が浮き彫りになったケースが多かったのではないでしょうか。
こういったデメリットが新型コロナ感染症でクローズアップされたため、今回の留意事項が発出されたものと考えられます。

労働条件の明示事項には何があるか

労働契約の締結時には、労働者に対して次のような労働条件を明示しなければなりません。

書面で必ず明示しなければならない事項

  • 契約期間
  • 期間の定めがある契約を更新する場合の基準
  • 就業場所、従事する業務
  • 始業、就業時刻、休憩、休日など
  • 賃金の計算方法、支払の時期、昇給など
  • 退職(解雇事由を含む)

※書面ではなく、希望する場合には電子メールなどでも可


また、就業規則に必ず記載する事項も定められています。

就業規則に必ず記載する項目(絶対的必要記載事項)

  • 労働時間等
    始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交代勤務の要領
  • 賃金
    決定方法、計算・支払方法、締切・支払の時期、昇給
  • ・退職
    任意退職、解雇、定年など

労働条件通知書や就業規則には、始業時刻・終業時刻を記載する必要があっても、労働日や労働時間まで記載する必要がないことが分かります。
ただ、出勤日以外は休日であることから、休日を記載することで表裏一体である労働日を算出することはできますし、始業時刻・終業時刻から休憩時間を引けば、労働時間を出すことはできます。

何に留意することが必要か

今回発出された留意事項では、次のことに注意する必要があります。

始業・終業時刻

労働契約の締結時点で、①すでに始業と終業の時刻が確定している日についは、労働条件通知書などに単に「シフトによる」と記載するだけでは不足であり、労働日ごとの始業・終業時刻を明記するか、②原則的な始業・終業時刻を記載した上で、労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等を併せて労働者に交付する必要があります。

休日

具体的な曜日等が確定していない場合でも、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明記する必要があります。

両方とも、「必要があります」という文言がありますので、必ず守っておく必要があるでしょう。

労働条件通知書への記載内容

では、今後、労働条件通知書にどのような記載をしていけばよいかということが問題になります。

始業・終業時刻では、2通りの書き方を示しています。
シフト制を採用している事業場においては、労働契約締結時に始業時刻や終業時刻を確定することができないためシフト制を採用していることから、①の前者に当てはまりにくいことが考えられます。
そのため、②の「原則的な始業・終業時刻を記載した上で、労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等を併せて労働者に交付する」ことが必要になります。

厚生労働省のホームページで公開しているモデル労働条件通知書では、変形労働時間制を採用している場合の記載例が載っているので参考になるでしょう。


https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/youshiki_01a.pdf

シフトの作成、変更、設定で留意すべきこともある

上記の他に、シフトの作成、変更、設定で留意すべきことについても記載しています。
なお、必ずしも就業規則にこの考え方を記載する必要はありません。

作成 変更 設定
・シフトの作成時に、事前に労働者の意見を聞くこと
・シフトの通知期限
例:毎月○日 ・シフトの通知方法 例:電子メール等で通知
・一旦確定したシフトの労働日、労働時間をシフト期間開始前に変更する場合に、使用者や労働者が申出を行う場合の期限や手続
・シフト期間開始後、確定していた労働日、労働時間をキャンセル、変更する場合の期限や手続

作成・変更のルールに加えて、労働者の希望に応じて以下の内容についてあ らかじめ合意することも考えられます。

・一定の期間中に労働日が設定される最大の日数、時間数、時間帯
例:毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する
・一定の期間中の目安となる労働日数、労働時間数
例:1か月○日程度勤務/1週間あたり平均○時間勤務
・これらに併せて、一定の期間において最低限労働する日数、時間数などを 定めることも考えられます。
例:1か月○日以上勤務/少なくとも毎週月曜日はシフトに入る

どこの事業場においても、業務を回す上でシフトの通知期限や通知方法は決まっているものと思います。
また、社員の公平性の観点からも希望休を聞いたり、意見徴収も行っていることが多いようです。
変更についても、社員が急用で休むなど業務を回していくために別の社員に頼むなど、労使で話し合って決めていることが大半だと思うので実務的にはそれほど問題になることは少ないと言えます。

労働条件通知書に、シフトの作成、変更、設定で留意すべきことを記載するのであれば次のような記載方法が考えられます。

始業・終業の時刻 所定労働日・所定労働時間

毎月〇日までに社員の意見を聞いて指定するシフト表により原則的な始業・終業時刻を基本に定める。
【原則的な始業・終業の時刻の例示】
(1) 9:00~16:00
(2)7:00~14:00

毎月〇日までに社員の意見を聞いて指定するシフト表により定める。
なお、所定労働日数は1か月〇日以上とする。(所定労働時間は1か月〇時間以上とする。)

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