補助金・助成金
キャリアアップ助成金は最もメジャーな助成金のひとつです。
中小企業で有期契約社員などの非正規社員を正社員に転換することで57万円(生産性要件に該当する場合は72万円)の助成金が受給できます。
一度は利用したことがあるという事業主の方も多いのではないでしょうか。
また、キャリアアップ助成金は、顧問の社会保険労務士がいない事業所においても単独で申請しているケースも目立ちます。
今回の変更は、そういった単独で申請している企業が気を付けるべき内容です。変更点を見ていきましょう。
令和4年4月1日以降変更点の概要
「キャリアアップ助成金が変わります~令和4年4月1日以降変更点の概要~」
①有期契約社員から無期契約社員への転換が廃止
意外に使いやすかったケースでしたが、有期契約社員から無期契約社員への転換が廃止になりました。
②正社員の定義が変更
正社員は、①賞与または退職金の制度のどちらかが適用されている者、かつ、②昇給がある者、と定義が追加されました。
現行 | 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者 |
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改正後 |
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者 |
なお、賞与の支給や昇給の有無が実績として求められるわけではないことに注意が必要です。
つまり、会社の業績によって支払えない場合があっても助成金の対象として認められます。
この場合であっても就業規則には、次のような記載が必要になります。
賞与の記載例
良い記載例
賞与は原則として支給する。ただし、業績によっては支給しないことがある。
悪い記載例
賞与は支給しない。ただし、業績によっては支給することがある。
※支給時期なども明示することが望ましいとされています。
昇給の記載例
良い記載例
昇給は、勤務成績などを考慮して、毎年●月●日に行う。ただし、会社の業績によっては行わないことがある。
悪い記載例
会社が必要と判断した場合には、会社は、賃金の昇給を行う。
いかがでしょうか?
賞与の支給については就業規則に記載をしている会社も多いと思いますが、昇給を原則行うと就業規則に明示している会社は少ないように感じます。
もう一度、就業規則の記載内容を確認することをお勧めします。
③有期契約社員等の定義が変更
ここも必ず押さえておきたい変更点です。少しでも考え方が間違っていると助成金の対象となりませんので気を付けましょう!
現行 | 6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者 |
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改正後 |
賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者 |
「賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用」、という部分と、「6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者」、という部分の2つに分けて考えていきましょう。
賃金の額または計算方法が
「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用
賃金の額または計算方法が正社員と異なる就業規則とは、基本給、賞与、退職金、各種手当等について、いずれか一つ以上、正規雇用労働者と異なる制度を明示的に定めていることです。
具体的には、基本給の多寡や賞与・退職金の有無等で差をつけるということ。明示的に定めていることがポイントです。
これまで就業規則があったとしても、適用が正社員のみであり、有期契約社員等は雇用契約書によって別に定めるとしているケースは就業規則に明示的に定めているとは判断できないので、対象外となります。
キャリアアップ助成金の対象となるためには次のような規程の運用にしていく必要があります。
(ⅰ)正社員用の就業規則と有期契約社員用の就業規則に分けてしまう。
(ⅱ)ひとつの就業規則の中で、正社員と有期契約社員の定義を規定し分ける。
小規模な会社では(ⅱ)の運用をしている会社が多いと思いますので、(ⅱ)の場合の記載例を書いておきます。
(社員の定義)第●条 社員の定義は次の区分とする。
(1)正規社員・・・期間を定めず雇用したフルタイム勤務できる者
(2)契約社員・・期間を定めて雇用された者
(3)パートタイマー・・正規社員より1日又は1週間あたりの所定労働時間が短い者
(賞与)第●条 賞与は、正規社員に対し、原則として年2回(6月と12月)支給する。ただし、事業所の業績の低下その他やむを得ない事由がある場合には支給時期を延期、又は支給しないことがある。
6か月以上受けて雇用している
有期または無期雇用労働者
正社員と異なる雇用区分の就業規則等の適用を6か月以上受けている必要があります。
つまり、上記で説明した「正社員と異なる雇用区分の就業規則」を6か月適用されている必要がありますので、10/1に転換を予定している場合には4/1時点でこの就業規則に変更しておくことが必要です。転換前に慌てて規程を変えても助成金の対象とならない可能性があります。
また、有期契約社員の適用されている就業規則に『契約期間に係る規定がない場合』、これは有期契約社員ではなく無期契約社員として扱われます。
つまり、この規定がなく雇用契約書で有期契約社員とした場合であっても、無期契約社員として扱われますので、無期契約社員から正規社員の転換に該当し、助成額が28万5000円になります。
助成金の内容を正しく把握しましょう
- 就業規則の抜本的な変更の必要性がご理解いただけたのではないでしょうか。
この変更を社会保険労務士の助言なく行うのは難しいように感じます。
少しでも不安があれば、お気軽にご相談ください。