ベンチマーク:株式会社能作(富山県)へ訪問

経営

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先日、人を大切にする経営を目指す「人本社労士の会」で富山県の株式会社能作を訪問してきました。

株式会社能作は、富山県高岡市で400年の歴史ある伝統産業「鋳物」を扱う会社です。
素材である錫や真鍮、青銅から、仏具、茶道具、華道具、インテリア雑貨を鋳造している製造業です。
鋳造とは、簡単に言うと「たい焼き」を作るようなイメージです。

世界で初めて純度100%の錫製テーブルウェアを製造するなど革新的な会社で、産業観光(工場見学など)、錫婚式、海外進出、医療分野への進出など様々なことにもチャレンジしています。

 

第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で審査委員会特別賞も受賞しています。
最近では書籍やTVでも紹介されているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

株式会社能作で有名な錫100%のコップでワインを飲むと味がまろやかになるそうです。
つまり、「980円のワインも2,980円ぐらいになる(笑)」そう。
僕はあまりお酒が飲めないので、妻曰く、「確かにまろやか、においも違う」とのことでした。

社長からの講話、工場見学で感じたことを記載していきます。

1.新製品から市場を作った

先ほども説明した通り、錫100%の製品を世界初で作ったのがこの会社です。
錫の特長は、とてもやわらかく加工が難しいこと。
手で曲げられるので製品にする価値がないとされており、硬度を高めるために他金属を加えて使われていました。
しかし、技術力で加工の難しさをクリアし、逆転の発想で曲げられるなら曲げて使おうということでできた製品が写真の「KAGOシリーズ」ですね。


おそらく、このような市場は既存にはなかったはずなので、新製品から新しい市場を作っていったのだと思います。
市場がないから価格を自分たちで決めることができるし、そのため利益率が高い。
やはり優良企業になればなるほど、価格決定権を自社で持っていますね。

講話の中で、「続けること・あきらめないこと」をお話されていました。
「あきらめず続けていると成功確率は、年々上がっていく、だから途中で辞めるのはもったいない。成功は誰にも分からないから。」とおっしゃっていました。

2.敵をつくらない

「競争」というよりは「共創」の発想

伝統工芸である商品は、問屋から発注を受けて、下請業者が分業して製造するそうです。
その商流の中で、株式会社能作は生地を作っていました。生地の上に着色、研磨などを行って一つの製品に仕上げていきます。
そして、時代の波から伝統的な仏具や花器の需要は徐々に減少、自社製品を開発することになりました。

様々な展示会に出展しニーズを拾っていき、それを自社製品に反映させ、今では直営店を海外含め14店舗展開。
その中でも問屋も大切にし、高岡市の問屋と取引がある場合には問屋から買ってもらうようにしたようです。
問屋がつぶれてしまうと、その地域の下請会社もつぶれてしまう、地方の伝統産業もなくなってしまうことの危機感が理由のようです。
そして、会社から営業はしない。
この辺りも、競合他社との「競争」というよりは「共創」の発想をもっているのが、すごい点ですね。

基本的には何でもオープンにして、真似されても良いと思っている

今はコロナ禍で製造現場を歩いて回ることはできないのですが、コロナ以前は近くで製造しているところを見学できました。
また、工場内を幼稚園児や小学生が見学するのは反対の意見もあったようですが、憧れのまなざしで見学されたら悪い思いはしないですよね。
きっと家庭でも自分の仕事を自慢したくなりますし、そうすることで仕事に対する「誇り」みたいなものも醸成されるのだろうと感じました。
自分の仕事を家族に見せられるというのは大事な要素だろうと思います。

3.想い

「鋳物職人の地位を取り戻す」

30年ほど前に、工場見学に来た親子(母親と小学生)に鋳型の造型の作業を見せる機会が。
その際、母親から「ちゃんと勉強しないと、あの人みたいになるわよ」と社長に聞こえる声で子供に言ったそうです。
鋳造の仕事は3K(きつい、汚い、危険)職場と言われることが多い。
それを聞いた社長は非常にショックを受けました。
そして、その日から「鋳物職人の地位を取り戻す」ということが目標になったそうです。

今では、工場見学に来た小学生がここに就職したいと思って高校や大学を出て、実際に就職するそうです!
私が工場見学した時も、そういった人が多く働いているのを見ました。

昔のショックな経験があって、今ではそれをバネに地域の憧れの職場になっている。
想いを持って続けることの大切さを学びました。

おそらく、このような市場は既存にはなかったはずなので、新製品から新しい市場を作っていったのだと思います。
市場がないから価格を自分たちで決めることができるし、そのため利益率が高い。
やはり優良企業になればなるほど、価格決定権を自社で持っていますね。

基本的には直営店重視

オンライン販売もされているのですが、基本的には直営店重視のようです。
コロナ禍でオンラインを拡大するのかと思いきや、良いものは触れてもらってから購入してほしいということで、直営店を増やしていく方針のようでした。

コロナによってオンラインに力を入れれば、売上も拡大できる気もしますが、先ほども書いたように営業しないというスタンス、良いものは触れてもらってから購入してもらうというように、「軸はぶらさない」というところも良い会社の共通点のようです。

 

良い会社さんを見学できた日でした。
株式会社能作様のホームページはこちら

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